中小同族企業(ファミリービジネス)の永続的繁栄の基盤づくりをオーナーシップ(所有)システム、ビジネス(経営)システム、
ファミリー(家族の関係性)システムの3つのシステムを統合、その「見える化」によりサポートします。

to visualize the rules and plans of business succession

ビジネスコーチ会計 女ケ沢亘税理士行政書士事務所

ホーム > ニュース > FBAA マンスリーニュースで記事を書きました。

FBAA マンスリーニュースで記事を書きました。News

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■税理士とファミリービジネス FBAA相続税務マネージャー 女ヶ沢 亘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■税理士はファミリービジネスを理解する必要がある━━━━
 
ファミリービジネスを同族経営とすると
中小企業のほぼすべてはファミリービジネスです。


税理士はファミリービジネスがさまざまな課題を相談する相手として
一番馴染みが深く、税務面のみならず経営課題の相談先として
期待されている存在だと思います。


私もたびたびファミリーのかかえるプライベートな相談を受けます。
特に経営者はみな孤独といわれますが、社内ではできない相談、
家族にはできない相談を税理士にされる経営者は多いのではないでしょうか?


またクライアントが求める税理士とは
そんなパートナーとしての存在だと私は思います。


一方で税理士がファミリービジネスの課題に向き合う際、
うまく対応できていないことも多いと私は感じますが
皆様はいかがでしょうか?


事業承継で悩んでいるファミリービジネスを例にとります。


税理士に相談する内容として当面の課題は
税金や相続の問題が多いでしょう。


それゆえ事業承継プランを考えるにあたり
税理士は概ね次の3つの視点からプランを作成することが
多いのではないでしょうか。


一つ目の視点は税法と納税資金の視点です。
主な内容としては

・自社株式の評価とその引下策の検証。

・相続財産全体の評価と相続税の把握。

・評価額引き下げ等の相続税対策と納税資金対策の検討です。


二つ目の視点は会社法の視点です。
主な内容としては

・後継者が議決権を確保するための施策検討です。


三つ目の視点は民法の視点です。
主な内容としては

・後継者と他の相続人との財産の分割プランの検証。

特に遺留分侵害等を回避するための施策検討です。


つまり税金・納税資金・議決権確保・財産分割のバランスといった視点から
施策を検討していきます。


また上記に加えその企業の価値の源泉を把握し
その企業価値源泉を毀損させることがないように
次世代に承継させるといった視点も大切な視点でしょう。


これらの視点には深い専門分野があり、
すべてをカバーするためには相当な知識と経験が必要と感じます。


深い専門分野への理解に加え毎年新しくなる税法や法律をキャッチアップし
クライアントにとって一番いい提案を目指し自己研鑽を行う。
事業承継プランの作成はやりがいがありおもしろいですが
責任の重い大変な業務です。


しかし一方で上記の視点をすべて検討し施策を決定でき、
税理士として自信をもって事業承継プランの作成ができたとしても


・当のクライアントから抵抗されたり、

・クライアントが実行をためらったり、

・一度スタートした計画にストップがかかったり、

・当初の方針とクライアントのビジョンがブレる


こういったケースに途方にくれるという経験はないでしょうか?


税金も抑えられ、後継者の議決権も確保でき、
遺留分問題もない財産の分割プランなのにどうして・・・。
 

私はそんな経験が増えるにつれ自分の人間力の無さに問題があると考えておりま
した。

これも先の見えない自己研鑽が必要だと・・・。


今は人間力向上は個人的なテーマではありますが、
ファミリービジネスには上記視点だけでは解決できない特性があることに
FBAAの活動を通じて少しは理解ができてきましたので
以前の様に途方にくれることは無くなりました。


特に事業承継問題は施策実行のために検証する事項も多くあり、
時間がかかるのは当然ですし、実行準備をすすめると
当初の関係者の考えも変化し施策の変更も当然にあると理解してます。

 
ファミリービジネスの特性の一つは
ファミリービジネスの意思決定には単なるビジネス上の経済合理性だけでない
ファミリーの状況からの判断も大きく左右するということです。


この点をあたりまえと思われる方も多いかもしれません。


しかし我々税務・法務の専門家はとかく専門分野からの問題の
アプローチと解決策の検証を行いがちで
ファミリーの状況からの視点でその施策検証が不十分な気がします。


仮に事業承継プラン作成の依頼に際し、ファミリービジネスオーナーから
事前にファミリーに関する問題を相談されているケースがあり、
そして事前に相談されたファミリーに関する問題を考慮したプランが作成できた
としても、
実際にはその経営者がこちらに伝えていない問題、
若しくはその経営者にも見えていない問題が存在するかもしれません。


この様な状況に対応するために、
税理士側がある程度、そのクライアントが既にかかえているかもしれない問題、
若しくは提案する施策の実行により新しく発生可能性のある問題を
認識しておく必要があります。


事業承継プランを作成し実行を見届け、そのクライアントから離れた後、
そのプラン実行により発生した問題に
クライアントファミリーが後々大変な状況にならないためにも
ファミリーの状況からの視点は、
特にクライアントがファミリービジネスである以上、
重要な視点ではないでしょうか?


ファミリービジネスを理解するためのフレームワークとしては
有名なスリーサークルモデルがあります
(スリーサークルはFBAAのロゴにも使用されています)。


このモデルではファミリービジネスをファミリー、オーナーシップ、ビジネスの
3つのサブフレームからなる一つのシステムとして捉えます。


ファミリービジネスの関係者は3つのサークルが重なり合いできる
7つの領域に区分でき、
その立場の違いから様々な衝突、競合、対立、葛藤、緊張等を生じさせます。


またスリーサークルの3つのサブフレームは、
時の経過や事業の状況等により関係者を変化させ、
特にサブフレームが重なる領域の関係者間では
ファミリービジネスに特有な問題が生じやすいとされます。


スリーサークルモデルを使いクライアントであるファミリービジネスを理解し
その事業承継プランの実行をさまざまな関係者の立場で検証できたら、

またそのプラン実行後におこりえる
関係者間の衝突、競合、対立、葛藤、緊張等を予想できたら、
いままで見えてなかった問題に気がつくかもしれません。


その結果、いままでとは違った角度からの確認や異なる提案をしたり、
プラン実行前にクライアントにより納得感のある説明を
行うことができると感じます。


税理士としてクライアントであるファミリービジネスの理解を深め、
ファミリービジネス特有の問題について
ファミリー、オーナーシップ、ビジネスの
3つのサブシステム全体をクライアントとして
そのファミリービジネスの相談に対応できたら
税理士はファミリービジネスが期待するパートナーとして
よりお役立ちできると私は考えます。

【女ヶ沢亘】

このページのトップへ